Sunday, April 23, 2006

Once Upon a Time in Mexico

原題を直訳すれば「むかしむかしメキシコで…」となる。それを邦題では「レジェンド・オブ・メキシコ」と変えて伝説の男の話というトーンにしたようだ。でも、この映画、やっぱり原題っぽく見ないと苦しい。つまり、おとぎ話として見なければ、色々な話がごちゃまぜになって進行するので、いちいち枝葉を追いかけているとかなり疲れる。でも、まぁ、これだけ枝葉を広げながらも、最終的には全員うまく映画の中に納めこむのだから、まぁそれはすごいなと思わされる。普通だとこうはいかない。では、なぜうまく行ったのか。それは不要になったら殺してしまえるからだ。枝葉抹殺型脚本とでもしておこうか。とにかく物語の敵役は見事に全員死んでいく。冒頭から物語が相当クサい。テレビの「刑事ナッシュ・ブリッジス」で、ナッシュの相棒役ジョー・ドミンゲスを長い間演じていたチーチ・マリンが、それらしくガンパッチつけて馬鹿馬鹿しい話をさもありなんと話す。それを聞くのがジョニデ。最初は彼の話かと思うほどにずっと話を引っ張って行くのだが、これが長い。いつまでたっても話の設定が終わらない。ようやくアントニオ・バンデラス演じるマリアッチが動き出すまで一時間もかかる。この点は、これまで学んできた基本からすると、あきらかに長すぎる。さらに先にも書いたが枝葉だらけで、どうなることやらという感じ。しかし、見終わってみると、学習してきた20分ルールというのは、あくまでも手法のひとつであって、サビアタマな作りをしようとする場合においての鉄則ということがわかる。この映画では、ここの枝葉の導入と同時に重ね合わせた意図があり、まず全部ネタを出してから、それらを収斂させていくのではなく、すこしづつ細かな収斂をそのつど描くので、設定完了までが長いと感じたわけだ。凶悪な男・バリロをウィレム・デフォーが演じているが、彼があいかわらずワル系の役にキャスティングされているのは惜しい感じがする。味のある役で主役を務めて欲しいもんだ。キャスティングで思い出したが、この映画、その点では徹底的にメキシコ・スパニッシュ系のおいしいところを集めた感じで、昔のFBI捜査官役のルーベン・ブラデズまでもがメキシカンに馴染んでいて面白い。その視点からすると浮いているのはジョニーとミッキー・ローク。彼らを衣装などで一生懸命馴染ませようとしているが浮いている感じが否めない。まぁそういう役どころだからそれでいいのだがミッキー・ロークの相変わらずぶりにも驚かされる。彼はもうこういう役しかできないのだろうか。どこか飲んだくれのダメ系ヤサ男。映像は全体に彩度が高い。赤道近くの強い光を強調しているようで、実際はそうでもない。だが、その赤道直下の濃密さは色彩によって強く感じられ、色に関しては相当意識しているように思われる。とにかく物語は、なんでやの…という疑問符だらけなのだが、まぁいいじゃんという具合に進んで行くので、そういうなんで…という視点は中盤までであきらめた。見ていてすごいなぁと思ったのはメキシコの風俗の面白さだ。特に「死者の日」という祭りの情景は見ごたえがあって、京都の祇園祭を思い出した。街の様子、テキーラに料理、闘牛…、いずれにしろメキシコといえば思い出すような要素は全部入っている。だがそのすべてが現実のものをベースにしているので、この映画の前に見た「Mr & Mrs Smith」でのキューバのセットのような、うぉっというような迫力はない。つまりセットでその世界を作るなら、オリジナルの再現だけではダメで、たとえば天井の高さとか、光の入り方といったところでのある程度の誇張が必要になるということだろう。しかしこの映画、監督、製作、脚本、撮影、プロダクションデザイン、編集、さらに音楽まで、全部ロバート・ロドリゲスひとりでこなしているっていうのにはマジ驚かされる。やる気になったらできるのね。

0 Comments:

Post a Comment

<< Home