Monday, December 10, 2007

300

100万を誇るペルシアの大軍を、わずか300人の屈強なスパルタ軍が迎え撃つという「300」についてエントリーを残しておく。っていうか、どう見ても100万もの軍隊がそこにいるようには見えない。それはさておき映像的にすっごいぜっていう印象がこれまで数多く語られているわけだけれど、物語は単純だし、その意味ではもっと登場人物の内面を描けるはずなのに、そこはもうすぱっと捨てたのか、とにかく「殺し合い」ってのを、いかにカッコよく見せるかに、持てるお金を全部注ぎ込みましたーっていう作品…だろうか。つまり、観客に何も考えさせないってことなわけだけれど、それで驚異的な興行収益を上げたって言うんだから、そのあたりは僕には良くわからないなぁ。CGでとことんまで映像をいじくりまわすと、こういう映画が出来るという技術見本のような感じだったが、僕が見終わったときに感じたのは編集が良いなぁということだった。美術もいいし、殺陣もいいし、まぁ、唯一とまでは言わないけれど、編集が素晴らしい。きちんきちんと本当に丁寧に絵を切り替えていくわけだが、そのセンスというか、ぎりぎりのところでパスっと切り替えていく。これが結構出来ていない映画が多くあるけど、この作品は素晴らしい。映像的には、全面的にCGを使っていること以外にも、これまで見たことのないものを見せてくれる。戦闘シーンの3台のカメラを同時にハイスピードで回して一本の映像に繋いで行く作り方も、殺陣のディレクションの素晴らしさと相まってものすごく新鮮だ。というよりこの殺陣がすごいのか。とにかくスタジオで徹底的に計算しつくされた状態で俳優たちが絡み合っているからか、とにかく一瞬たりとも無駄のなさが際立つものを感じさせた。コミックスの原作を踏襲しているからか劇画的な構図が数多く新鮮に思えた。モノクロでシルエットで表現することで印象的な絵としてかれるような場面が動きを持って見せられると、視線はそのシルエットに動くが、そこは逆に、映像的には背景を慎重に且つ繊細に描こうとする美術監督の努力が見て取れる。それから、この映画の戦闘シーン以外に漂うモードな絵づくりには興味が湧いた。前半の巫女が舞うシーンは、まさに一幅のモード写真のようだし、ペルシャ軍の総裁クセルクセスの衣装や彼の玉座のデザインやテントなどに見え隠れする美術の作りこみが目を引いた。要は血なまぐさい殺戮との対比として、ある程度の存在感が必要だということなのだろうが、クセルクセスがらみの完成度はとても高い。それに比べてレオニダスは王とは言いながら質素なものだ。そこにスパルタという国の性格づけも見て取れる。映画としては60点。映像体験としては90点ってところだろうか。