Wednesday, January 18, 2006

GOOD WILL HUNTING

以前「オーシャンズ11」を観てマット・デイモンというハンサムボーイが実は相当の役者だということに気づいた。そこで急に「ボ-ン・アイデンテティ」を観てみる気になり、その後「ボーン・スプレマシー」、「オーシャンズ12」と見てきた。そうした間違った時系列を経た上で、この作品もマットに期待したのだが、その期待は裏切られなかった。あの曲者のロビン・ウィリアムス相手に全然負けない存在感を示す彼は、確かに素晴らしい俳優だった。この映画は98年公開の作品だから随分前の映画である。だが当時の僕は映画どころではなかったので実はこんな上質な映画があったことすら知らなかった。完全に仕事中毒に陥っていたと断言できる。それはさておき、この映画の舞台であるボストンにはロケで行ったことがある。レンガでの外装が法律で定められているのために、市内の建物はすべて同じような外壁に統一されていて、新築マンションの工事現場でも、どこでも同じようなタイル施工を行っていたことを懐かしく思い出す。本当に映像で見るよりも遥かに美しい街なのだ。僕が撮影で訪れた季節は初夏だったが、ボストンコモンの美しさは今も心に残っている。MITとハーヴァードの境にある、あの三角地帯のカフェでも当時流行りのケージャン料理を食べたっけ。大学側の川ぞいからスカイスクレーパーが立つ市庁舎界隈を望む景色もとても懐かしい。それはさておき、この映画を見て、その内容に驚いた。僕はウィルのような天才ではないが内面はまるで自分に近い。そうなった理由は当然違うが抱えている問題はかなり近い。弱い自分を隠し、そこを突かれると逃げる。「言えるのなら愛していないと言って。そうすればあなたの人生から出て行く」と言われ、スイッチが入る。寂しいのに即座に「愛していない」と口にして、相手を傷つけながら自分が傷つくことを避ける。そしてそれを自分を保つことだと信じているが実は人に捨てられるのが一番怖い。だから捨てられる前に相手を捨てる。逃げて逃げて逃げながら同時に人を傷つけて生きている。やり込めるときは徹底的に痛めつける。それは自分が傷つかないための最大の防御。そうして自分を保つ。この映画でのウィルはまるで自分だった。邦題のサブに「旅立ち」とつけられているが随分薄いと感じる。映画の主題は人間誰しもの内にある自己確執からの出離であり、旅立つという事象ではなく本当の自己を自分で覚る苦悩を描こうとしていると思う。その意味で「旅立ち」というタイトルは薄い。しかし、むずかしいことだ。ホントこういう方向に自分の殻を破るというのはむずかしいことなのだ。

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