MULHOLLAND DRIVE
マルホランドと言われるとデヴィッド・ホックニーの絵の方を素早く連想してしまう僕だが、それはさておき今ごろ「マルホランド・ドライブ」である。ナオミ・ワッツという女優が前々から気になってはいたのだが、「キングコング」の予告を見たのもあって興味が湧き、この作品を見る気にもなった。そもそも僕はデヴィッド・リンチが描く映画のトーンは「ツインピークス」から決まってしまったと思い込んでいる。つまり連続テレビドラマってことだ。映像も「ブルーベルべット」が彼の完成された世界観なんだろうとも思っている。ということで改めて興味が持てなかったというのが本音かもしれない。この映画はどーよと思って観始めた途端、やっぱりそうなのかと思わされずにはいられないリンチ的映像手法が炸裂する。異常なほど幸福感を演出してから反転して怪しげな世界へと導く手法も相変わらずだ。意味ありげに登場する男たちを蝋人形のように撮るのもリンチらしい。天井から垂れ下がるベルベットのドレープカーテンが登場した時には「出たよ」と言う感じ。もちろん独自の世界を持っているわけだしリンチの才能は認める。色彩感も学ぶところが多い。さて本編、とにかく前フリが長い映画だ。だが巷で言われてきたような難解さはどこにも見当たらない。どうしてこの映画が難解なのだろう。簡単に言えば田舎娘のダイアンが都会に翻弄され失恋して自滅する物語を、彼女の自分勝手な脳内映像を軸に描いたものと理解すればいい。その意味で映画のカテゴリーはサスペンスではなくて恋愛映画に属するとも思われる。難解だと思う人はこれを練られた映画だと思うからではないだろうか。リンチの仕事は連続テレビドラマとして見なければ楽しむ以前に腹が立つほど無駄な枝葉だらけなのだから。とはいえ「エドのブラックリスト」を奪うシーンでの殺し屋のマヌケぶりのように、その枝葉が結構良く出来てるわけで、余計に始末に悪いともいえるだろう。一方、そもそもの興味の対象だったナオミ・ワッツだが凄いの一言に尽きる。信じられないような演技力を見せつける場面があるが、それをスクリーンで見る僕までが言葉を失ったほどだ。女優と言う仕事はこういうことが即座に出来なきゃ駄目と言われたら9割の女優は即刻グラビアモデルに降格だろう。底知れぬ才能に驚くばかりだった。こりゃ「21グラム」も見とかなきゃならんな。
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