Saturday, October 01, 2005

La Vita è bella

悲しい映画だ。本当に悲しい。ものすごく悲しい。こんなにも哀しみがずしんと響く映画も中々ない。邦題はアメリカ版の公開タイトル通りに「ライフ・イズ・ビューティフル」。ナチによるユダヤ人虐殺は第二次世界大戦における戦死者の大きな割合を占める。戦わずしてただ死んで行った彼らひとりひとりすべてにこの哀しみがあったのかと思うと、身の毛のよだつような悲惨さが心の底に渦巻き、それが土台となって家族への愛に一心に向けられていたグイドの明るさが哀しくて仕方がない。舞台は1939年のイタリアで始まる。陽気なグイドが勤めるのは叔父の経営するホテルだが、このホテルの真っ白なセットが素晴らしく美しいのには少し驚いた。うるさいよと言うぐらいぺらぺら喋りまくるグイドを演じるロベルト・ベニーニの本職はコメディアン。しかしその能天気な演技が後半からの展開に繋がっていくから心を掴まれてしまう。ベニーニの実際の妻でもあるニコレッタ・ブラスキ演じるドーラと暮らす家は豊かなイタリアのヴィラそのもので感動するほど美しい。笑いを取りつつ幾つも散りばめられた伏線が見事に物語の中に収束されていく様は見事だが、そこに出現する様々な小さな出来事が単なる枝葉ではなく最終的に物語全体の伏線となっているとは気づかなかった。収容所の残酷さは直接的には描かれない分、言いようもない悲しみに襲われる。ロベルト・ベニーニの大袈裟さが実は愛情の表出であることを、息子に隠れたところでの絶望の表情にベニーニは押し込める。この明暗落差を映画のテーマに置いて演じきったベニーニは本当に素晴らしい。

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