Monday, January 30, 2006

2046

ふと目に留まったこの映画。見てみようと思った引き金になったのはウォン・カーウァイがBMW FILMSの「Hire」に参加した時に見せた澱みなく流れるようなカメラワークだった。ただ美しい映像が見たかっただけである。そこのところの期待をウォン・カーウァイはこの映画でも裏切らなかった。美しい旋律と情感豊かな音楽も彼独特の味だろう。美術も衣装も秀逸なのだが、なんと言っても色彩感が素晴らしい。構図の中に無駄な色彩を置かず、でも簡素ではない。そこには常に十分に感じられる質感があり、描かれる状況が臭気まで伴って立ち上がってくる。しかしそれは悪臭ではない。吐き気を一切感じさせずにエグい世界を画面に持ち込む。こうしたファッション写真を思わせる洗練されたタッチが僕は好きだ。さらにそうした世界観を見せ切るクリストファー・ドイルのカメラワークに心酔する。彼はクローズアップ、パン、チルト、ズーム…あらゆる撮影技法を駆使してかなり大振りに画面を動かすが、その動きと完全に同期するフォーカシングによって人間の目のように視野が途切れることがない。この作品でもその繋ぎの感覚が冴えている。しかし、その視点から言うと固定を選んだ列車のセットで繰り広げられるパートの映像は頂けない。キムタクを中心にここで登場する俳優たちの演技も弱く、香港のホテルやレストラン、シンガポールの賭場を描いたパートに較べると明らかに見劣りする。物語の内容から言えば別に未来的なセットデザインにする必要はなかったと僕は思うがどうなのだろう。映画には引きの絵はなくウィリアム・チャンスーピンの手による完璧に作りこまれたセットで撮影されている。空想部分にも質感を与え衣装を変えるだけでも十分だったかもしれない。俳優としてはチャン・ツィイーが際立つ。彼女の素晴らしさは主演のトニー・レオンが醸し出す相変わらずだが味のある存在感と相性がいい。その分まったく冴えない木村拓哉が情けない。テレビタレントと映画スターの違いを見る思いがした。

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