Wednesday, January 04, 2006

MILLION DOLLER BABY

まさかこんな結末が待っている映画だとは知らずに観た。プロモーションからは、アカデミー賞を総なめにしたハリウッド映画で、貧しい女がボクシングで勝ち上がっていく物語…という先入観しか持たされていてなかったからか、頚椎を痛めたあとの展開は予想もしていなかった。彼女が絶頂に登り詰めた瞬間に倒れ、ぐぎっといく瞬間を境にして物語はずしんとした重みが積み重なっていく。映画を見終わってみると、そこからの後半15分で描かれる哀しみだけが記憶に残る。印象に残るのは怠け者一家の描き方だ。リングの中での事故も、全身不随もどこか映画の中の物語の域を越えないのだが、中盤で、必死で頑張って家を贈った母に「維持費が大変なんだよ」と言われてしまう場面。また見舞いに恰好つけてディズニー遊びほ呆ける無神経な家族を徹底的にクソ野郎に描ききることで、その対極にある絶望が二人を包み込んでいく様が現実味を帯びて立ち上がってくる。映画の中では絶望が徹底的に描かれるが、尊厳死がどうなのかの前に、誰にとってもすぐそこにある人の哀しみや痛みが胸に刺さる映画だった。いまもクリント・イーストウッドのしゃがれ声が耳に残る。

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