Thursday, January 26, 2006

STEALTH

映画の内容は量子コンピュータと自己学習型人工知能を搭載した最新鋭無人戦闘機EDIが起こす混乱のお話。その新型ステルスEDIはまるでUFOのように飛ぶ。近未来に実現される可能性のある技術ではあるが舞台は現在。そこにある非現実面にリアリティを与える事は成功しているが、突然EDIが出現する背景や戦わなければならない理由の部分がゆるゆるのまま。そこを適当に諦めて徹底的に娯楽作として仕上げた作品のように思う。物語は息つく間も無く次々に展開する。そのスピード感で見る人の意識を曖昧な部分に運ばせず、最後まで一気に見せてしまおうという魂胆だ。物語自体で正義を描きたいが方策は戦争。その矛盾が垣間見える。同時に低学年の子供も見れるようにするための配慮も随所に見出せて面白い。それはたとえばヘンリーことジェイミー・フォックス操るステルスがEDIに翻弄されて壁に激突する場面でも人の死の痛みを極力感じさせないし最後に英雄として扱ったりする。核弾頭を爆破しろとの指令に対して、近隣住民が放射能の影響を受ける事への人間的な躊躇も描かれる。さらに、愛する存在を守るために自分の死を持って当たる自己犠牲という行為や精神が人間的だと言わんとするようなEDIの体当たりや、普通ならキスしたり抱き合ったりする場面でも、そういう行為一切なしで終わるところも、とにかく大人だけを対象とせず子供まで幅広く見れる娯楽作に仕上げるための配慮が随所に見える。そういう意味では余計な枝葉は綺麗に剪定され「この先どうなるの。どっきどき。」という具合に観るのが正しい見方だろう。一方、とにかくあらゆる場面で、絵作りや演出の元になっている過去の映画の色々なシーンのクリッピングが見え隠れして僕はそっちの方でも楽しんだ。人工知能が暴走する話の元祖は「2001年宇宙の旅」のHALだが、ここでのEDIはその声まで近い。人口知能心臓部の液状の造作は青の色まで「アイロボット」での美術を思わせるしEDIの感情変化もどこかサミーを思わせる。攻撃目標ビルに爆弾が貫通するの爆破描写は「パールハーバー」の戦艦アリゾナ被爆のシーン。飛行場での爆発シーンは「ボーン・スプレマシー」のドイツの家の爆発か。ジープも転がすところは迫力あるがスタントがワイヤーで引っ張られている動きが見え見えで完成度は低い。突飛にタイでの休暇が差し込まれるが色彩感がやけに強調されてボンド風。北朝鮮で逃げまくるところは「エネミーライン」だろうか。結局一番印象に残ったのはタイトルバックのタイポグラフィとエンドクレジットのグラフィックだった。

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