Sunday, October 30, 2005

THE BOURNE SUPREMACY

ボーン・アイデンテティ」の続編。そのタイトルに「スプレマシー」という言葉が使われているのを知ってニヤリとしてしまった。スプレマシーは確か最高位とか高い優位性を示すときに使われる言葉。もちろん映画の物語そのものの展開を示すものとして選ばれたのであろうが、一方で作り手たちがジェイソン・ボーンを「最強」という存在に位置づけたいというような意識があるような気がしたのだ。そしてその意識は前作を見たときに強く感じたものだった。さて本編だが正直言って面白いと思った。息つく暇がない展開。前半早め、ジェイソンにストイックであるがナーバスな面も持っているパーソナリティ描写をインドネシアのビーチハウスを舞台に素早くキチンと盛り込む。映画の本筋は徹底した戦いの連続であり、そこにいたる前に短い時間で組み込むあたりの手際は見事だと思う。

美術も撮影も素晴らしい。世界観の表現が見事だ。ベルリンのアパートメントのインテリアも裏を正せば相手方の個性を現していて見事。序盤の彼の苦悩が滲むノートの作りこみやデスク回りの小物なども徹底している。物語は世界中を駆け回る。その分、中々描かれない街が登場するが、個々の街の独特の雰囲気が次々に見れるあたりはとても楽しい。圧巻はモスクワだろう。ボルガでのカーアクションは、本当にもの凄く長いのだが、まったく飽きない。いや飽きないどころかボルガの助手席に自分も乗せられているようなカメラワークには本当に驚かされる。このリアリティは過去に例を見ないのではないだろうか。延々と見せ場が続く中にジェイソンの冷静さを描きつつ、どがーんとブチ当たって飛び散る破片などが自分に向かってくるようなカメラワーク。すごい構成だと思う。物語としては悪役は破滅しジェイソンは孤独ながらも優位性を保ったまま去っていく。タイトルどおり主人公は常に高い優位性を保っている。気になったのはジョアン・アレンが演じるCIA女部長の設定が少し弱過ぎると思った。仮にもその役職にいるのであれば汚い裏側も持った存在でなければならない。しかしジョアンは変に真っ当な女でしかなかった。もう少し底知れぬ何かを持った女優が欲しかった。たとえば「オーシャンズ12」でいみじくもマット・デイモンの母親役を演じきったチェリー・ジョーンズが漂わせるような一癖ありげな臭さのようなものだ。

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